当ブログをご覧いただきありがとうございます。
最近フェラガモの靴の修理をご依頼いただきましたので、この機会に人物としてのフェラガモについてお話したいと思います。
フェラガモというと靴の世界的に有名な高級ブランドですが、その人物像についてはあまり耳にする機会がないかもしれません。
しかしながらフェラガモは一冊の自伝小説を出版していて、その人生を知ることができます。
日本語にも訳されていて、私を含めた靴職人の多くはこの本から多くの励みを得ています。

フェラガモは世界的に成功した人生のように感じますが、この本を読むと自身の大半は苦労の連続だったことが分かります。
幼いころから家の向かいにある靴職人の店に通い、いつしか自分も靴職人になりたいと考えていました。
9歳の時に教会の洗礼式に出席する妹の靴を作ったのが靴作りのスタートになり、12歳の時から靴屋で働き始めました。
努力が実り自分の店を持つことができたのですが、家族の不慮の死、仲間の裏切り、二つの世界大戦での大きな被害を受けました。
さらに自分の店が倒産するということも経験しました。
それらのことを一つの人生で経験することになるのですが、フェラガモはあきらめることはありませんでした。
当時のイタリアでは珍しかった解剖学を靴作りに採り入れ、デザインと履き心地を極めた靴を作ります。
そうした彼の靴は次第に評価を受けるようになり、世界的なブランドへと成長します。
そのように成功を収めたフェラガモですが、自伝の最後にはこのように語っています。
『私は永久に歩み続けよう。まだ仕事に手をつけたばかりだ。将来やらねばならない天から授かった仕事に備えて、私はまだ腕を磨いている最中だ。
私には時間がたっぷりある。必ずやり遂げてみせる。この五体で成し遂げられなければ、他の人の手で実現するだろう。
我々は永遠の流れに身を委ねている。永遠の流れに終点はない。』
高い技術や世界的な名声を得てもなお、ひとりの職人として成長することをやめることはありませんでした。
フェラガモはこの自伝を書いてから数年後に亡くなります。
わたしはときどきこの本を読み返すのですが、フェラガモのこうした靴作りに対する熱い思いは私の力となっています。
私の作る靴には、自分の名前を刻んでいます。
自分の名前ではない店名も考えたのですが、しっかりとした仕事をしたいとの思いから『カワムラヒデトモ』にしました。
自分の名前を刻む靴です。いい加減な仕事をすることはできません。
フェラガモの靴作りを目標にして、日々仕事に向き合います。