靴に限らずファッション分野全体、小さな工業製品から大規模な建築物に至るまで、モノづくりはまず最初に設計図やデザインを描きます。
自分たちが作りたいと思うものをデッサンし、それをどのように生み出していくのかアイデアやイメージを形にしていきます。
わたしの場合は、まずデッサン用のノートに基本的な靴のデザインを描きます。

このデッサン用のノートは紙が薄くなっていて、一枚下に描いたデザインが透けるようになっています。
すでに描いたデザインの上に新しい紙を重ね合わせ、それを基に別の新しいデザインを描くことができます。
そうすることによって、基本的なデザインを様々な方向にイメージを発展させていくことができます。
理想的なデザインが描けたら実際に製作するためにさらに掘り下げます。
もしも企業が靴を生産する場合、多くの人が製作に携わっていますので、さらにこれを丁寧に仕上げていく必要があります。
例えばデザインだけでなく生産する足数、製造コスト、製作日数、必要な革や資材など、社内だけでなく取引先など複数の人と話し合わなければなりません。
そうすると、相手にとってわかりやすいデザイン画や付加的な情報をまとめる必要があります。
では、どのようにして描くのか、一つの例でご紹介したいと思います。
今回は手書きで、最もシンプルな内羽根の紳士靴を取り上げます。
まず定規で線を引き、その上に大まかに靴を描きます。

そして下書きの上をペンでなぞっていきます。

細かい部分も可能な限り正確に描きます。
多くの場合、ディテールについての話も行われます。
ですから、ステッチは1本なのか2本なのか、わかるように丁寧に描きます。
さらに革を貼り合わせる部分は、どちらの革が上にくるのか描かなくてはなりません。
そのためにコピックなどを使って陰影を描き、立体的に見えるよう仕上げていきます。
最後に余分な下書きの線を消します。

本当はこの他にハトメの大きさ、シューレースの長さ、使用する部材、ステッチのピッチ、ステッチとステッチの間隔は何ミリ、革や糸は何を使うなど様々な情報を書き加えていきます。
そのようにしてようやく、相手に訴求できるデザイン画が完成します。
しかしデザイン画といっても、企業によってかなり仕様が異なります。
もっとサッと描いたようなものもあれば、色も描く場合もあります。
あとは企業であれば、PhotoshopやIllustratorなどのソフトを使って製作する場合が多いかもしれません。
いずれにしても、オーダー靴のようにたった一足作るためであっても何百足もの靴を生産するとしても、このようなデッサンやデザイン画を描きます。
それが完成すれば、次に実際にそれを形にする準備ができたことになります。