革包丁


 今回は靴づくりで用いる刃物についてご紹介したいと思います。


 靴職人は刃物を扱うのは必須なのですが、職人によってはナイフを使ったり、日本古来の革包丁を使ったりします。


 私の場合、ナイフと革包丁の両方を素材や工程によって使い分けています。


 ナイフといっても、柔らかいアッパーの革、中底や本底のなどのショルダーやベンズといった厚みのある素材によって使い分けたり、切ったり削ったり厚みを調整したりするなど使い方によっても替えなければなりません。



 

 製甲に使うナイフは細く薄く、一方で本底用は幅広く厚みがあるナイフになっています。

 さらに細かい工程によって使い分けます。



 ナイフに関しては以前の記事でお話しましたので、今回は革包丁について取り上げたいと思います。



 革包丁も工程によって使い分けています。

 今回なぜこの包丁について取り上げるかと申しますと、新しく手に入れましたので、この機会にご紹介したいと思います。


 これまで底付けでメインとして使っていた革包丁がそろそろ替え時になっていたため、購入しました。
 浅草の材料屋さんで最近取り扱いを始めましたので、気になっていた包丁です。





 新しい包丁と比較すると、もともとこんなに長かったんですね。

 気付かないうちに角度がついていたことも分かります。
 

 さて、購入してすぐにそのまま使うこともできるのですが、使いやすいようにさらに仕上げていきます。


 包丁の裏を見ると、包丁によっては少し反っていることがあります。

 写真を撮っていなかったのですが、この包丁もそのような状態でした。


 底付け用は製甲に使う包丁ほど繊細に考える必要はないのですが、少し反りが大きく感じましたので、今回は面を平らに整えていきます。





 

 上の画像を見ていただきたいと思います。


 光を反射するほど面が整ってきたのですが、粗目の砥石を使ったときの傷と包丁の右端(画像では下端)と包丁の先端がまだ平らになっていないのがお分かりでしょうか?

 (スマホでご覧いただいている場合、お分かりにくいかと思います)


 この部分まで裏の面を整えないと、今後この部分まで刃先が減ってきた時に、どんなに表の面を研いでも綺麗に切れるようになりません。

 それで、この残っている部分まで平らになるように面を整えていきます。


 しかし実はこれも一長一短なんです。

 反りが大きいとその分砥石で面を平らにしなければならないのですが、それを気にしすぎると包丁の厚みが薄くなってしまいます。


 包丁が曲がってしまうことはないのですが、刃こぼれしやすくなる可能性があります。

 

 さて、以前に使っていた包丁の厚みが、約2.3ミリです。






 一方で新しい包丁を研いだ後に測ったところ、約1.8ミリでした。





 研ぐ前の包丁の厚みを測っていなかったのですが、研いだことによって厚みもある程度減ったとも考えられます。


 元の厚みを優先するのか、面を整えることを優先する方がよいのか意見が分かれるところです。


 きっとこれから使っていくと分かると思います。


 完璧に仕上げて使うのか、ある程度のレベルまで仕上げて技術でカバーするのか、靴づくりに限らず様々な分野で見られそうですね。


 刃物であれ砥石であれ加工の仕方であれ、職人によってこだわりが表れる部分と言えます。

 皆さまはどのようにお感じになったでしょうか。