雨に履きたくなる靴




 皆さまは雨の日のときに履く靴をお持ちでしょうか?

 水を弾く特殊な加工がされていたり、滑りにくいソールだったり、水たまりでも気にせず歩けるレインブーツかもしれません。

 また、防水スプレーを活用するのもよい方法ですね。

 ネットの情報や雑誌などには、いろんな情報が掲載されているのできっと参考にされる方が多いと思います。

 私も皆さまにはそのような履き方をお勧めいたします。



 さて、私の場合ですが、それらの対策は一切いたしません。

 誰よりも靴を大切に履いていると思われがちですが実はそうではないんです。

 なぜかと言いますと、自分が作った靴が雨によってどう影響するのか調べる良い機会になるからです。

 
 革がどのような影響を受けるのか、歩行にどう影響するのか、何年も履いていくうちにどう変化していくのか知る上で重要な情報を与えてくれます。

 そのため水たまりがあると避けることはせず、どれくらいで水がしみ込んでくるのか、その時自分はどのように感じるのかしっかり覚えておきます。


 
 さて、今回の靴は自分用に作りました。

 自分の靴は後回しにするためなかなか進んでいなかったのですが、ようやく完成しました。

 

 アッパーはアノネイのボカルーカーフ、ライニングはデュプイ、本底はレンデンバッハです。








 皆さまは新しい靴の場合は慎重に扱われると思います。

 クリームを塗ったり、もしものために防水スプレーを吹き付けるかもしれません。

 皆さまはもちろん、そのようにしていただきたいのですが、作り手である自分は靴に対しては少し異なる見方をしています。
 

 この靴は風雨にさらされるとどんなことを教えてくれるのかと考えます。


 これは新しく傘やレインブーツを買ったときに、なぜが雨が待ち遠しくなるという感覚かもしれません。

 そしてこの靴も、晴れや雨であっても履いていきます。

 雨の水をたっぷり含んだ靴は吸水したりせずそのまま放置して、推奨されている陰干しではなく、天日にさらします。

 一番やってはいけない方法ですね。

 
 さらに、靴を休ませてローテーションするような甘やかせる履き方は致しません。

 






 こうした履き方は経年変化をより感じることができます。

 左右で靴クリームを変えているので、その違いがどのように変化していくのか楽しみにしています。

 ご存じの方がいるかもしれませんが、もしもニュートラルの色を使っていると革の色が少しずつ抜けてきて明るい色になってくるんですね。

 

 今回はソールは左右で同じ素材なのですが、次に貼り替えるときは違ったものを使いたいと考えています。

 つま先などのポリッシュは控えめにして、アノネイのボカルーが今後どんな経年変化を見せてくれるのかが楽しみにしています。

 

 






 個性を表現できる部分の一つがメダリオンです。つま先のスクエアの形に合わせてデザインするのもいいですね。


 さて、自分の靴が過酷な使用でどうなるのかということは、これからの靴づくりに活かされていきます。