今回は「製甲」について取り上げたいと思います。
靴に携わる方以外は使うことのない言葉ですね。
パソコンやスマホを使うと、変換候補に出てこない単語です。
漢字の通りに説明すると、甲を覆うパーツを作る工程になります。
クロージングと言ったりもします。
これには革を漉いたり、ミシンで縫っていくことなど様々な手順で進められます。
大規模な企業では、漉き専門、ミシン専門などそれぞれ職人がいます。
専門性を極める必要のある重要な工程と言えます。
そうした専門の職人さんは圧倒的な速さと高いクオリティーで様々な形のパーツを仕上げていきます。
靴作りを始めたころにそうした職人さんの映像を見る機会があり、驚いた記憶があります。
さて、クリッキングが終わったら、次に漉き機を使って厚みを調整します。
各パーツによって漉きの幅や厚みを変えます。
そのように丁寧に漉くことによって、見た目だけでなく心地よい履き心地になります。
漉き機の「押さえ」など各部分の調整ができたら、実際に漉きをかけていきます。

漉き機の全体はこうなっています。
足を踏み込んだら刃が回転し、左から右に革をスライドさせることによって漉くことができます。
シンプルながらも重厚感のある機械ですね。

各パーツの漉きを終えたら、ゴムのりで貼り合わせ、ミシンで縫っていきます。
各パーツの革や縫う部分に合わせ、糸や針を選択します。
タン(ベロ)は表と裏は別の革を使うため、上糸と下糸は異なる糸を使います。

これは「ポストミシン」と言って、下から腕が伸びているのが特徴です。
これによって立体的な部分も自由に縫うことができるようになっています。
今回は革とキャンバス生地を使ったコンビネーションの靴です。
革と革を合わせて縫うときと違って、少し感覚が違ってきます。

キャップなどを縫うことができました。

ミシンを使う工程はいつも緊張感と戦っています。
これが終わったら、かんぬき(ステイ)、靴ひもの鳩目(アイレット)などの工程を経て、アッパーの完成です。