ドラフトが完成したら、それに基づいて木型を作ります。
足りない部分は革を足し、大きい場合は削っていきます。
木型は足の形そのままに作っていくことではありません。
足を見ると、とても複雑な形をしていることにお気づきだと思います。
もしも足の形のままに木型を作ると、つり込んだ時に隙間ができたり、脱ぎ履きできなかったり、デザインが乗らなかったり、美しさに欠けてしまいます。
足に合いながらも靴としての機能を持たせるこの工程は何度行っても難しく感じます。
まだ製作中の下の木型をご覧ください。

足を測った情報に基づいて作っているのですが、木型の形は大きく異なっていることがわかります。
まず左の木型は甲や側面に革を加えていますが、一方でかかとは小ぶりなため削っています。
側面に革を加えるて幅が広がると、少しつま先が尖って見えませんか?
つま先のカーブを緩やかにして、少し丸く削る必要を感じます。
真ん中は足が幅広の方ですが、甲は低く削っています。
一方で内側の肉付きが多く革を厚く足しています。
右の木型はまだ初期段階なのですが、つま先が丸い靴をご希望のため、丸いつま先に合うように全体のバランスを調整しています。
このように足に合うだけでなく、デザインやバランスを考えながら機能や美しさも求めなければなりません。
私も他の職人も同様に、木型の制作に多くの時間を割いています。
木型が完成すると、フィッティングを確かめる仮の靴を作っていきます。
