靴作りに限らず、金属を取り扱う人にとってよくあることの一つがサビとの戦いです。
工具類が錆びることはよくあるのですが、靴メーカーにいた時、他の職人の中でも自分の工具類だけ錆びるのが早く、とても悩まされていました。
使ったあとは油などを塗ったりしてある程度防いでいるのですが、そうしていても錆びてしまいます。
今まで椿油やケミカルなサビ止め剤など、いろいろなものを試したのですが、一番よかったのがこの大容量の業務用サビ落としです。
今回はこのウェルトビーターのサビを落としたいと思います。
ウェルトビーターとは、すくい縫いをした後のウェルトを平らにして締めるためのもので、靴作りの工程で一度しか使用しません。
私の場合ちょっと使っていないだけで、このように錆びてしまうんですね。
ではこれを先ほどのサビ落としの液体の中に入れて、しばらく放置します。
するとどうでしょう…
このように、しっかりサビが落ちています。
この後、サビを防ぐためのさび止め剤を塗っておきます。
(まあそれでも錆びてしまうのですが…)
さてこの液体、成分の力があまりにも強すぎるんです。
ある時、サビをしっかり落としたいと思い、長時間浸していました。
これはウェルとにギザギザを刻む工具です。
ご覧のように金属の部分が溶けてしまい、ボロボロになってしまいました。
木製の柄の部分も変色しています。
裏面の注意書きを見ると、「重篤な目の損傷、遺伝性疾患の恐れ、生殖能または胎児への悪影響のおそれ…」などと書いていました。
錆を落とす力って恐ろしいですね。
直接触れてもいないのに、手をしっかり洗いました。
ふと、靴メーカーで働いていた時の特殊健康診断を思い出しました。
メーカーでは毎日、シンナー成分を含んだ接着剤などの溶剤をたくさん使用するんですね。
そのため、どれくらい体に影響を及んでいるのか調べることが義務づけられています。
自分の場合、基準値の中に収まっていましたが、ある程度体の中に蓄積されているのが数値で表されていました。
今はたくさんの靴を作るために長時間溶剤を扱うということはなくなりましたが、こういう溶剤の力って恐ろしいですね。
有害な成分が含まれていない溶剤が販売されていているのも納得です。
さて、今回取り上げたサビ落としはホームセンターには置いていないのですが、いろいろなネット販売などで購入できると思います。
私はアマゾンで見つけました。
強めのサビ落としをお探しの方はおすすめいたします。
注意書きをよくお読みの上、よろしければご参考になさってください。
『液体サビおとし』鈴木油脂工業株式会社