出し縫いを行うためにはもちろん針と糸を用意しなければなりません。
それを作る様子を今回ご覧いただきたいと思います。
この出し縫いの糸を丁寧に作っておくと、スムーズに縫うことができます。
そのため糸を作る工程も重要な作業になります。
今回作る靴の出し縫いには、6本撚りの麻糸を使います。

では糸を作りましょう。
まず6本で撚ってある糸を1本ずつに分けます。
そして先端の長さを少しずつずらして解きます。

6本に分けた糸を再び1本にまとめ、着色します。

今回は茶色のインクで染めました。
インクが乾いたら、糸にチャンと呼ばれる松ヤニを刷り込ませます。
なぜチャンを糸に含ませるのでしょうか?
もしも麻糸をそのままの状態で縫うと、履いているうちに糸がほつれてきたり、雨などで糸が腐ってすぐに切れてしまいます。
チャンによって糸を強くし、長持ちさせることができます。
チャンは糸に馴染ませたり、効果を発揮させるために別の成分を混ぜます。
私の場合は和チャン、洋チャン、蜜蝋そして油を混ぜています。
何を混ぜるか、どの配分にするかはそれぞれの職人さんによって違います。
季節によっても違います。
左が和チャン、右が洋チャンです。

これらを一緒に鍋などに入れて加熱し、水の中に入れて冷え固めます。
それを作る際にはその様子をご紹介したいと思います。
さて、糸にチャンを刷り込ませることができたら、針に巻き付けて、出し縫い用の糸が完成です。

糸ができましたので、出し縫いをする準備ができました。