中底作り

 

 

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 カワムラヒデトモではビスポーク靴のほか、レディース靴、靴修理をおこなっています。


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 さて今回のテーマは「中底(なかぞこ)」です。


 靴の中を見ると中敷きが見えると思いますが、それを剥がすと見えてくるのが中底です。

 中底という言葉は一般的にはあまり知られていない言葉ですが、実は靴作りでとても重要な役割を果たしています。


 地面に接する本底も重要なのですが、本底はすり減ったりしてくると修理して交換することができます。

 しかし、中底の場合は交換することはまずありません。

 靴をすべて分解したら交換できないことはないのですが、たとえそうできたとしても履き心地は大幅に変わってしまいます。

 

 そのように靴にとって重要な中底がどのようにして作られているのかご紹介します。


 中底の素材には牛革のショルダーと呼ばれる部位を使っています。

 これはその名の通り牛の肩の部分のことです。

 これは適度な厚みがありながらも柔軟性があるため、歩いた時に足の動きにピッタリ合ってくれます。

 また、吸水性に優れているため、足に直接触れる部分においても最適です。


 下の写真をご覧ください。

 2枚の革のうち、上がショルダーになります。

 その下の革はベンズといって、本底に使う革です。

 ベンズはショルダーより厚みと硬さが加わり、全体重を支えるのに必要な堅牢性を備えています。



 さて中底のショルダーの話に戻りますが、木型に貼る前に中底を少し加工していきます。

 ガラスを使って、ぎん面(表)の表面を取り除く作業をします。



 まずガラス板を適度な大きさに割ります。

 この時、割った断面が緩やかなカーブを描くように力を加減します。

 これを押し当ててすべらせると、表面だけが綺麗にはがれていきます。

 削った部分の色が変わっているのがお分かりでしょうか?

 まるで、昆布を削って、とろろ昆布を作るみたいですね。



 しかしなぜ、表面を削るのでしょうか。

 これに関しては、職人によって様々な意見があります。


  1.汗を吸いやすくなる。

  2.歩くときに中底の表面が割れないようにする。

  3.歩くときに足が滑らないようにする


 …などです。


 皆さまは正解はどれだと思われますか?


 私は、どれも正解なのではないかと思います。

 いずれにしても、よりよい靴を作るためにこういった細かい工程を経て作られていることをお分かりいただけたのではないでしょうか。


 さて次は革をしばらく水に浸したあと大まかにカットし、外周に釘を打って中底に貼り付けていきます。


 革が完全に乾いた後、周りの釘を抜いた状態が下の写真です。



 中底が乾くと、木型の底にぴったり沿った状態になります。


 この中底を貼る方法にはこのように釘を周りに打ち付ける方法と、自転車などのゴムのチューブをぐるぐると巻き付ける方法があります。


 どちらの方法を行うかについては、これも職人さんによって意見が分かれるようです。



 釘を使うと隙間ができてしまうので木型にぴったり合わないという意見や、ゴムチューブを使う方法は中底の水分が抜けにくいといった見方があります。


 どちらの方法も行ったことがあるのですが、それぞれ対策方法がありますので、最終的にどちらも変わらないという結論に私は至っています。


 職人さん一人一人の考え方や作り方がありますので、それぞれの方法を尊重したいと思っています。


 さて、中底が乾いたら外周を木型通りに切り、ナイフや包丁で内側と外側に溝を掘り、リブと呼ばれる部分を作ります。



 ベヴェルドウェストという仕様ですので、リブの踏まず部分は少し内側に入り込んでいます。


 これで中底が完成です。

 次はつり込みに進みます。