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カワムラヒデトモではビスポーク靴、レディース靴、靴修理を行っています。
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さてレディースのフルグローグ(ウィングチップ)の続きをご覧いただきたいと思います。
前回はパターンを作るところまでお伝えしました。


このようにパターンが出来上がったのですが、これが本当に木型に合うものなのか確認をしたいと思います。
紙でパターンを組み立て、木型につり込んでみます。
同時にフルグローグのデザインも描きます。

このように紙で立体的にパターンを組み立ててることによって何が分かるのでしょうか?
実際につり込んでみることによって、シワや隙間などを各部分をチェックすることができます。
さらに左右の羽根の合わせ具合、かかとの収まり、つり込みしろ、全体のバランスなども確認することができます。
紙は引っ張ったりすることができないので、シワや隙間があるとよくわかります。
これだけでも十分多くのことが分かるのですが、私の場合はさらに革を使ってつり込みをチェックします。
試作用の革を使ってアッパーを作っています。
なぜなら紙のアッパーでは気付かなかったことが分かるようになるからです。
そのようなわけで先ほどのパターンを試作用の革の上に乗せ、クリッキングします。


さらに漉き機で厚みを調整し、ミシンで縫っていきます。


このようにつり込みをチェックするためのアッパーができました。
これを木型につり込みます。


大まかにつり込んでみて、紙の時と同じように各箇所をチェックします。
革を使ってつり込んでみることによって、より本番に近い状況で確認できます。
今回のつり込みで、かかとやトップラインの隙間が確認できました。
羽根の部分も気になりました。
これらの得られた情報をもとにパターンを修正したいと思います。
さてそのようにしてパターンを修正しました。
それを今度は実際に靴にする革の上に乗せてクリッキングします。
今回使う革はフランス・デュプイのシャトーブリアンです。
カワムラでレディースによく使っている革です。

今回作るデザインはフルブローグ(ウィングチップ)です。
フルブローグの大きな特徴の一つは、パーフォレーションと呼ばれる大小の小穴のデザインです。
この穴を一つずつポンチを使って開けます。


さてここで、クリッキングや穴を開ける方法について少しお話したいと思います。
ほとんどの製造メーカーではこのように一つずつ穴を開けているのではありません。
パターンの形に作られた刃型を革の上に乗せ、上からガッチャンとプレスして一度に裁断します。
このように一度に裁断できるので、多くのメーカーではこの方法が採用されています。
この方法は短時間でたくさんのパーツを裁断できるメリットがあります。
一方で、すべてのデザインとサイズの刃型を用意する必要があるため、一定以上の足数を生産しないとコストがかかります。
一方で私のような個人店の場合はナイフや包丁、ポンチなどを使います。
自由なデザインでクリッキングできる一方で、多くの時間がかかります。
同じデザインを短時間で多く生産するのか、一つずつ異なるデザインを作るのか、その違いによってそれぞれのメーカーが裁断する方法を選んでいます。
さて話を戻し、ナイフで切ったりポンチで穴を開けて、各パーツを作ることができました。

今度はこれを試作の時と同じように漉き機で厚みを調整し、ミシンで縫っていきます。