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さて今回は「つり込み」という工程を取り上げます。
つり込みというのはアッパーに木型を合わせる工程になります。
「釣り込み」「吊り込み」などと表記するようですが、どれが正しいのか分かりませんのでこのブログでは「つり込み」としています。
英語では「ラスティング」とよばれ、木型(ラスト)の形になっていく意味合いが含まれています。
さて以前の記事で、レディースのアッパーと中底の製作の様子をご紹介しました。


今回はそのアッパーと木型を合わせる工程になります。
これには「ワニ」という工具を使います。

これは、先端がワニに似ているからそのように呼ばれたと言われています。
英語では「ラスティングピンサー」と言います。
日本語では見た目で名前が付けられ、英語の名前は使い方に基づいていることが分かります。
ではこのワニを使って釘で打ち付けていきたいと思います。
いつものように最初は仮のつり込みを行います。


それによって全体のバランスやかかとの収まり具合、つり込みしろ、革の張り具合などを確認します。
ではいよいよつり込み作業の開始です。
つり込みの仕方は、じつは職人によって様々であることをご存じでしょうか?
私はこれまで3人の方につり込みを教えていただく機会に恵まれました。
作っている靴のタイプが異なるということもあるのですが、つり込み方法も三者三様です。
それに加えて、使う工具も異なっています。
私もレディースとメンズではつり込む方法や工具を変えています。
例えば、レディースの場合は日本製のワニを使います。
レディースはつま先が小さいため、先端の幅が狭いワニによって細かく革をまとめることができます。
そしてつり込むときも、表と裏の革を同時につまんで引っ張ります。
一方でメンズの場合は、先端の幅が広い海外のワニを使います。
厚みがあるメンズ用の革をしっかり掴むことができるからです。
そして表と裏の革を別々に引っ張ってまとめていきます。
さて今回の靴はレディースの靴ですが、マニッシュタイプ(メンズのデザイン)になっていて、革もメンズ用を使います。
そのため表と裏を別々にまとめていきます。
画像のように、つま先は裏革を先にまとめます。


さて、そのようにしてつり込みができました。


つり込みが完成したら、次にウェルトを作り、すくい縫いに入ります。
底付けの中で重要な工程が続きます。