当ブログをご覧いただきありがとうございます。
今回は靴に使われる革のお話です。
これまでこのブログで、革の特性についていくらかお話したことがあるのですが、まだ取り上げていなかった革がありましたので、革を裁断するこの機会にご紹介したいと思います。
今回ご紹介するのは、フランス・デュプイ社のサドルカーフです。
デュプイはヨーロッパを代表する有数のタンナーになります。
靴がお好きな方でしたら、何度もその名前を聞かれたことがあるのではないでしょうか。
さてこの革についてお話する前に、そもそも革というのはどのようにして私たちの手に入るようになるのかお話したいと思います。
ここでお伝えしたいことは、靴を始め、服やバッグや小物、ベルトなどに使われるほとんどの革は食肉文化の副産物によるということです。
つまり、革を必要とするために動物を育てるのではなく、肉を頂いた結果として革を利用するということになります。
牛や豚などの革がそれに当てはまります。
その一方で、ワニは革を採るということが第一目的として養殖されています。
そういった食肉文化の副産物であることを踏まえ、フランス周辺のヨーロッパではどのような肉が好まれるのでしょうか?
フランスでは厚みのあるしっかりとした噛み応えのある成牛ではなく、柔らかい仔牛の肉がよく食されます。
そのため、そこから採れる革も必然的にやわらかい仔牛の革(カーフ)になります。
それらのフランスの革はレディースやメンズの靴、バッグなど高級な革として重宝されてます。
そのフランスのタンナーの一つが、今回取り上げるデュプイです。


広げてみました。


デュプイが扱う革には様々な名前がついているのですが、サドルカーフとはどのような特徴があるのでしょうか。
一言で言いますと、肌触りが「しっとり」としている革です。
同じデュプイのシャトーブリアンに比べると、少しコシを感じます。
柔らかすぎず、硬すぎないバランスの取れた革です。
そしてこの革は、加工は最小限にして革が本来が持っている風合いを生かしている印象を受けます。
革の画像をご覧ください。
自然の光を当てて撮ったのですが、シワを確認していただけるかと思います。
これは特に首の部分に見られます。
牛は草をはむときなど首を上下によく動かすからです。
画像ではわからないのですが、血筋や虫に刺されたような跡やキズも見られます。
世界に流通している革の中には、顔料をしっかり吹き付けてシワやキズを目立たなくし、ピカピカになっている革があります。
そのような革は少し磨くだけできれいに輝いてくれます。
一方で、この革は加工を最小限にとどめ、革が本来持つ特性をそのまま残していることが分かります。
実際のところ、シワなどがある部位はサンプルや仮縫いの靴に使うのですが、革の本来の風合いを楽しめる革であることが分かります。
つまりこの革で靴に仕上げると、少し磨いたらピカピカに輝くというより、手入れをすることによって時間をかけて革を育てていくのが楽しくなる革と言えます。
デュプイのサドルカーフは革の持つ本来の風合いを楽しみたい方、磨きながら時間をかけて革を育てていきたい方に特におすすめです。
今回はこれを裁断していきたいと思います。